大雨。降ったりやんだり。

 

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

 

  6編の短編、中編が入ってて、最後の作品以外は同じ登場人物と同じ職場。主人公の20代女性とちょっと先輩女性2人がグループになってて。そこに男性上司や男性新人が絡んでくる。インフルエンザが流行ってるのにマスクをせずにせきこみながらしゃべりかけてくる上司。しかも業者みたいにマスクを売りに来る、とか。悪い人じゃないけど手くせのよくない男性社員からお気に入りの文房具を取られたっぽいけど現場を見てないから返してと本人に言えないとか。アルゼンチンのフィギアスケートの選手が妙に気になって職場で話題にしたいんだけど、先輩女性の一人がマイナスの力を持ってるようで、先輩女性がスポーツの応援すると成績が下がったり、ケガをしたり、監督が干されたりってなるからアルゼンチンのフィギアスケートの話をどうやってもっていこうか、とか。

 

 私が今まで働いてきた職場で実際にあったような、人によっては「何も起きてない」と思ってしまうかもしれない、「生」とか「死」とかのそういうザルの目からこぼれてしまう、どうってことのない話。私が大好物の話。

 

 仲のいい人ばかりじゃないし、やな人もいる。でもほぼ毎日、一緒に過ごして連帯感が生れることもあったりして。仕事だから仕方がないって接してる人もだんだんほつれてきたな、仲よくなれるかな、あ、やっぱムリとか。毎日同じくりかえしで煮詰まってるようで実は平和だったり安心感だったりする。その中でおもしろいことをする人がいる。命にかかわることじゃないけど。

 

 最後の作品は大雨警報が出て、職場がある「洲」から本土まで電車かバスで橋を渡らないと帰れないのに運休になってしまって仕方なしに歩いて橋を渡ろうとする人達の話。暴風雨の中、レインコートを着ていてもずぶ濡れになって、体温がどんどん奪われて体力が消耗してしまって。なかなか橋を渡りきれない中で、一緒に本土を目指している仲良くもない相手と話してもとんちんかんなことしか返ってこない。それでも会話を続ける。家に帰ったら、部屋に着いたら、シャワーを浴びて、テレビつけて、あったかいお茶が飲みたい、インスタントラーメンが食べたい、とにかく家に帰りたい!

 

 それまでは。家に着くまでは。どうでもいい話を続けたいな。おもしろい。大好き、大好きな話。